ある日突然私を襲ったアナフィラキシー…アレルギーとの正しい付き合い方

ある日突然、「アナフィラキシー」を発症した私。ピーナッツを食べた人が、みるみる呼吸が苦しそうになり、目を白黒させて倒れる…。アメリカ映画などでよく見るこのシーン。何のアレルギーもなく、花粉症すらない私は、まったくの他人事だと思っていました。

アナフィラキシーとは

アナフィラキシーとは「きわめて短時間のうちに激しいアレルギー症状が全身にあらわれる状態」です。なかでも、血圧が急激に低下して意識がなくなったり、気道が腫れて呼吸ができなくなるようなショック状態におちいる場合を「アナフィラキシーショック」といいます。この場合は、ただちに適切な処置をおこなわないと命の危険をともなうといわれています。

何の前触れもなく発症したアナフィラキシー

その日は20時頃に夕食を終え、3時間ほどパソコンで仕事をしました。「そろそろ寝よう」と思い、立ちあがって寝室へと廊下を歩き始めたその時。突然、頭皮がたまらなく痒くなったのです。両手で頭をかきむしっていたら、あっという間に全身に蕁麻疹が出て、身体中が痒くて気が狂いそうなほどに。

さらに、顔と頭がみるみるうちに腫れていくのがわかり、まるで自分が映画「エレファントマン」の主人公になったかのような感覚がしてきました。洗面所に行って鏡を見てみると、まぶたがぽってりと腫れ、唇がタラコのように腫れ上がっていました。

「これは、尋常じゃない」と思ったその瞬間、今度は気道がどんどん腫れてきて、みるみるうちに呼吸が苦しくなっていきました。

症状が出始めてからほんの1分で、命の危険を感じる状態に

頭皮が痒くなってからここまで、時間にしてほんの1分間ほど。文字どおり「あれよあれよという間」の出来事です。みるみるうちに息ができなくなり「死ぬ……!」と思った私は、そばにあったカバンに財布とスマホを投げ入れて家を飛び出しました。幸いすぐにタクシーが通りがかったため、数分のうちに救急病院へ着くことができ、受付に倒れ込みました。

顔がパンパンに腫れて目から涙がダラダラ流れ、全身蕁麻疹だらけでゼイゼイ息を切らしている私は、見るからに緊急度MAXの患者だったに違いありません。私を見た受付の人は、すぐに私をストレッチャーに乗せ、並み居る「夜間の救急診療待ち」の人たちをすっ飛ばして処置室へ運んでくれました。

注射と点滴で生きた心地を取り戻す

すぐに3人のお医者さんと数人の看護婦さんたちが私の上に覆いかぶさり、胸に心電図の電極をつけたり、腕に点滴の針を入れたり、太ももに注射したり、蕁麻疹を見るためあちこち私の服をめくったりしていました。

点滴が始まり、注射をしてもらうと、すぐに気道の腫れが引きはじめて呼吸が楽になり、頭がパンパンに腫れている感覚がなくなってきて、みるみるうちに楽になりました。しかし、先生たちはまだ緊迫したまま。その様子から「ほんとうに命が危なかったんだなあ……」とぼんやり考えていました。

(余談)女子は常にオシャレをしておく……べき?

余談ですが、この日は一日中自宅で過ごしていたため、ルームウェアのままで病院に来てしまい、下着もかなり「リラックス仕様」のものをつけていました。しかしこんな時に限って、お医者さんのうちの1人はかなりのイケメン。太ももに注射をするときや、蕁麻疹を見るために服をめくられる時、顔から火が出るほど恥ずかしかったです……。

女子たるもの、人目がなくとも常に、見えないところまで、オシャレをしておくべきと思い知りました。別にオシャレをしていたからといってどうということはないのですが、恥ずかしさだけはまぬがれることができる……と思います!

ショック症状の第二波にそなえ、その晩は入院

注射と点滴ですっかり楽になったにもかかわらず、その晩は有無を言わさず入院となりました。なぜかというと、アナフィラキシーが起こった場合、48時間以内に発作の第二波が起こる確率がとても高いため、少なくとも翌日の午前中までは経過観察の必要があるのだそうです。

入院病棟に移ってからも、深夜にもかかわらず何度もお医者さんが様子を見に来られ、看護婦さんからもまるで腫れものに触るかのような扱いを受け、気分が悪くないか何度も何度も聞かれました。トイレすら一人で行くことは許されず、看護婦さんについてきてもらわねばなりません。それだけショック症状の第二波が警戒されているということであり、「アナフィラキシーってほんとうに怖いんだなあ……」と実感しました。

結局、ショック症状の第二波は起こることなく、翌日には退院することができました。

アレルゲンは結局、不明のまま

その後3回にわたり、あらゆる食べ物や身の回りにある化学物質について血液検査をおこなったにもかかわらず、アレルゲン(アレルギーの原因物質)は不明のままです。アナフィラキシーを発症した日に夕食で摂った食べ物についても、検査結果はすべて陰性。後日、同じものを食べましたが、アレルギー症状は起こっていません。

お医者さんによると、血液検査で陰性を示した物質にアレルギー反応が起こることもあり、逆に、陽性と出た物質でもアレルギー反応が起こらないこともよくあるそう。また、アレルゲンは食べ物とは限らず、化粧品や文房具に使われている成分であることもあるそうなのですが、私のアレルゲンはいまだにわかっていません。

「エピペン」を常に携帯

アナフィラキシーを一度発症した人は、今後もまた発症する可能性があるそうです。アナフィラキシーの発作が起こると、きわめて短時間のうちに命に関わる状態に陥るため、アナフィラキシーの既往がある人には「エピペン」というアドレナリン自己注射薬が処方されます。

エピペンは、アナフィラキシーの既往がある人が常に携帯しておくべき薬(注射)です。アナフィラキシーの発作が起こった時には、エピペンのキャップを外して服の上から太ももに押しつけると、自動的に針が出て、アドレナリンが筋肉注射されるという仕組みです。太ももに打つ理由は、太ももの外側の筋肉注射が、もっとも早く薬剤が血液中へ吸収される方法なのだからだそう。

アレルゲンが不明なこともあり、いつどんなシチュエーションでまたアナフィラキシーの発作が起こるかわからない私にとっては、エピペンはまさに「命綱」です。

エピペンはあくまでも「応急処置」

エピペンによるアドレナリン注射には、心臓の働きを強め、血圧を上昇させ、気管支を拡張したり、粘膜の浮腫を改善する作用があります。つまり、血圧の急激な低下による意識混濁や、気管支の腫れによる呼吸困難に陥るのを防いでくれるのです。

とはいえ、エピペンはあくまでも「応急処置」に過ぎません。エピペンは医師の指導を受けないと処方してもらえないのですが、その際に「エピペンを打ったあとは、ただちに救急車を呼んで病院に来ること」と指導されます。

「アレルギーはシリアスな症状」という理解を

ある日突然「アレルギー持ち」になってしまった私。「死ぬ……!」と本気で感じたあの時の恐怖は、脳裏に焼きついています。アレルゲンが不明なこともあり、しばらくは食べ物全般が怖くなってしまいました。幸い、アナフィラキシーと定義されるほどの重篤な発作はあれ以来起きていません。しかしいまでも、朝起きたら唇が腫れていたり、前触れなしに突然蕁麻疹が出たりして、ヒヤッとすることはあります。

アレルギーの怖さは、体験した本人にしかわかりません。他人に「アレルギー持ちである」ことを説明しても、まるで私が「わがままで食べ物を選り好みしている」ような態度をとられることがあります。しかし、アレルギー持ちである人にとっては、「普段と違うものを食べたり扱ったりするときに気をつける」ことは、身を守るための死活問題なのです。

アレルギーの怖さは、当事者でなければわからなくて当然です。でも、もし周りにアレルギー持ちの人がいたときには、「そうなんだね」と理解を示してあげてください。