バセドウ病になった私が伝えたいこと。頑張るのは、美徳ではない

なんとなく体がだるい日々が続き、頑張ることができない自分を責めていたら、実はバセドウ病だった…女性に多いバセドウ病は、初期症状に気づきにくい病気です。体の不調がある人は、早めに診察を受けて欲しいという思いから、私の体験をお話しします。

なんとなく体調がすぐれない日々

私にバセドウ病の症状が現れ始めたのは、数年前です。仕事がものすごく忙しい時期が半年ほど続いたあと、今度は仕事の量が一気に減りました。

私はフリーランスですので、仕事があるのはありがたいこと。逆に仕事がない時期は、恐怖でしかありません。気分が落ち込むようになり、常に倦怠感がある日々が続きました。いつも疲れていて、十分に睡眠をとっているのに、疲れがとれない。

「もっと頑張らないと」と焦燥感はあるものの体がだるく、集中力も続かず、思うように仕事もできない。自己嫌悪のストレスからやけ食いするようになり、1年でなんと10キロも太ってしまいました。

いつも体が火照っている感じがあり、冬でも薄着でしたが、太ったせいで暑いのだと思っていました。頻尿にも悩まされ、「ストレス食いから糖尿病になってしまったのかも?」と怖くなり、ある日近所の内科医院を受診しました。

おじいさん先生の勘

いかにも町医者といった優しい風貌のおじいさん先生に「寝ても寝ても疲れがとれないし、一度疲れたら体力回復に数日かかるんです。これは私ぐらいの歳になったら、仕方ないんでしょうか?」と聞いた時、それまでニコニコしていた先生の目が「ん?」という感じでキラーンと光りました。

「頻尿ですし、冬でも暑くて汗をかくんです。早めの更年期か、糖尿病じゃないかと心配で」と訴えると、「費用は余計にかかりますが、血液検査に甲状腺ホルモンの項目も加えましょうか」とおじいさん先生。

甲状腺の病気の知識など皆無で、自分には関係ないと思っていた私は「結構です」と言って帰宅しました。しかし帰宅後、看護婦さんから電話があり「先生が、やはり甲状腺を検査したほうが良いとおっしゃっています。今日採血した分の検査項目に、甲状腺ホルモン検査を追加されませんか?」と言われました。そこまで言われるなら・・・と、お願いすることにしました。

「すぐに大病院に行ってください」

血液検査の結果を聞きに再びおじいさん先生の医院を訪れると、「甲状腺機能亢進症です」と告げられました。「甲状腺疾患専門の先生は、この近くだと○X病院にいます。紹介状を書きますので、月曜日の朝に○X病院、行けますか?」

その日は、土曜日の午前中。

「そんなに急いで行かないといけないほど、悪い状態だということですか?」

「はい。なるべく早く行ってください」

いままで病気ひとつしたことのない私が、病気ってほんと?それも、なるべく早く治療が必要な状態?そもそも、甲状腺ってなに?

頭がグルグルしながら、週末を過ごしました。

バセドウ病とは

ニコニコおじいさん先生が紹介状を書いてくれた大病院の先生は、これまたニコニコして優しい、ぽっちゃりした男性のおじさん先生でした。

2回目の診察で、前回の検査の結果を踏まえて告げられた病名は「バセドウ病」。甲状腺が甲状腺ホルモンを過剰につくってしまう病気です。

バセドウ病は、免疫システムに異常が生じる「自己免疫疾患」

免疫は通常、体内に侵入したウイルスなどの外敵を攻撃してやっつけることで、体を健康に保っています。しかし、何らかの理由で免疫に異常が生じると、自分自身の体を攻撃する抗体を作ることがあります。この抗体が甲状腺を刺激するため、甲状腺は甲状腺ホルモンを過剰につくってしまうのです。このように、体が自分の組織を攻撃する病気を「自己免疫疾患」と呼びます。

甲状腺ホルモンは代謝や神経の働きをつかさどり、人間が活動するのに必要なエネルギーを生み出します。したがって、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されていると、体が過剰に活動している状態になり、動悸や多汗、疲労感などの症状があらわれます。

狭心症の一歩手前だった

心電図の結果「狭心症の一歩手前ですよ」と言われました。心臓に負担がかかっているため、狭心症の薬を飲むかたわら、しばらくは運動はおろか、カフェインや辛い食品などの刺激物の摂取の禁止も言い渡されました。

10キロも増えた体重を減らすため、ランニングをしたり、少々の距離なら自転車で移動したりしていた私は、「もう少し病院に来るのが遅かったら・・・」とゾッとしました。

バセドウ病では、太ることもある

バセドウ病では代謝が高まりすぎてしまうため、「食べても食べても痩せる」という症状が知られています。私の知人にもそういう人がいて、恐ろしいほどの量を食べていましたが、体型はむしろかなりの痩せ型でした。

しかし、私は10キロも太ったのです。ぽっちゃり先生によると、バセドウ病では代謝も食欲も高まるが、稀に食欲の方が代謝を上回る人がいるとのこと。

あのいてもたってもいられない、突き上げるような食欲は、私に我慢が足りなかったからではなく、病気のせいだったんだ・・・

「意思が弱いから太ったんだ」と自分を責めていた私は、自分がかわいそうになりました。

投薬治療の開始

バセドウ病には、

  • 投薬治療(甲状腺ホルモンを下げる薬の服用)
  • アイソトープ治療(放射性ヨウ素の入ったカプセルを服用。甲状腺に集まった放射性ヨウ素が甲状腺ホルモンをつくる細胞を破壊)
  • 手術(甲状腺の切除)

の3通りの治療法があります。

アイソトープ治療と手術の長所は、治療が比較的短期間で終わることです。一方、投薬治療では最短でも2年、人によってはそれ以上の時間がかかります。

しかし、手術では甲状腺自体を切除してしまい、アイソトープ治療では甲状腺ホルモンを産生する細胞を破壊するため、体内の甲状腺ホルモンの量が減少し、治療後に「甲状腺機能低下症」になることが多いとのこと。甲状腺ホルモンを補うため、一生にわたって薬の服用が必要になるのだそうです。

「どちらにせよ薬の服用が必要なのであれば」と、最も体への負担が軽い「投薬治療」を選びました。

副作用が出ないか、おそるおそる過ごした治療初期

投薬治療では、甲状腺ホルモンの合成を抑える「メルカゾール」という薬を服用します。肝機能障害などの副作用が出る場合があるため、初期には2週間に1度血液検査を行い、副作用が出ていないことを確認しながら、慎重に投薬が進められます。

薬が合わない体質であれば、アイソトープ治療か手術しか治療の選択肢がなくなるため、最初のうちは副作用が出ないか心配でたまりませんでした。

幸い副作用は現れず、投薬治療をはじめて3か月ほどで甲状腺ホルモンの値は正常値に。しかし、甲状腺ホルモンを過剰に分泌させる抗体が正常値になるまでには、年単位の時間が必要です。治療開始から2年半が経った今、抗体値は正常値まであと一歩というところまで改善しています。

バセドウ病は、原因不明の病

バセドウ病の原因ははっきりとはわかっておらず、遺伝あるいは強いストレスが原因ではないかと言われています。

そして、甲状腺ホルモンや抗体の値が正常化した後も、約3割の人に再発が見られるそう。ホルモンや抗体の値が正常化してから何年も経って再発する人もいるそうです。基本的には「完治しない」と考えたほうが良い病気なのだそうです。最も良くないのはストレスであるため、ストレスを避けるよう、気をつけながら生活する必要があります。

バセドウ病は原因が不明で完治もしないという、深刻な心境に陥ってもおかしくない病気です。しかしぽっちゃり先生はいつもニコニコしていて明るく、この先生のおかげで私は深刻にならずにいることができています。

病気になってわかった、弱者の立場

それまで病気ひとつしたことがなかった私が、一転して「完治しない病」の患者に。これは私にとって、人生の見方を変えた出来事でした。

ホルモン値は正常になっているとはいえ、今でも疲れやすく、体力や気力がもたないため、意に反して身体を休めないといけないことがよくあります。

どんなに頑張りたい気持ちがあっても、体が言うことを聞かない。「自分の意思ではどうにもならないことがある」ということを身をもって経験して初めて、少しだけ謙虚な視点を持つことができるようになったと思います。と同時に、「世の中には同じような人がたくさんいる」という事実が見えるようになり、「他者に対して優しい気持ち」を持つことができるようになりました。何せ、私も「彼ら」の一員なのですから。

バセドウ病の初期症状はわかりにくい

私もそうだったように、バセドウ病の初期症状は「体がだるい」「気分がなんとなくすぐれない」など、すぐに「病気だ」とはわかりにくいものです。更年期障害の症状とも似ているため、「歳だから仕方ない」と放置されることもよくあるそう。

しかし私は、治療開始直前の時期には疲労感や倦怠感、発汗がひどく、バセドウ病特有の眼球突出の症状も現れるほどにまで症状が悪化していました。

治療開始がもう少し遅かったら、狭心症になっていたかもしれません。あの時「甲状腺ホルモンの値も検査しましょう」と繰り返し勧めてくれたおじいさん先生には、感謝しかありません。

体調不良があったら、すぐ病院へ行きましょう

日本の女性はとても頑張りやさんです。少々の体調不良は構わず、自分に鞭打って頑張り続けてしまう女性がとても多いですよね。

しかし「自分」は思っているほど強くはないのです。そして、体調不良には必ず原因があります。同じように体調不良を我慢し続けている頑張りやさんの女性に「すぐに病院へ行ってください」と伝えたくて、この記事を書きました。

今では私は少しの体調不良でも、「おかしい」と感じたらすぐに病院に行きます。たいていは何でもないのですが、そうやって「自分の体をいたわる」という行為自体が大事だと感じています。そして、自分をいたわる生き方をすることによって、他者に対しても優しい気持ちを持ち続けることができるのです。